特許申請の書類に登録商標を記載する場合には

特許申請の書類に登録商標に該当する語を記載する場合にはどうすればよいでしょうか?というご相談について回答します。

特許請求の範囲,明細書,要約書などの特許申請の書類に技術用語を記載する場合には、学術用語を用いることが原則です(特許法施行規則第24条様式第29備考7,第24条の4様式29の2備考8,第25条の3様式31備考7)。

どうしても登録商標を特許申請の書類に記載したい場合には、その語が登録商標である旨を記載しないといけません(特許法施行規則第24条様式第29備考9,第24条の4様式29の2備考10,第25条の3様式31備考9)。
具体的にはその語のあとにかっこ書で(登録商標)のように記載します。
特許庁のこちらのページに説明があります。明細書への登録商標の記載について-特許庁

登録商標である旨を記載しなければいけないのは、登録商標が普通名称化してしまうとまずいからです。特許申請の書類の内容は原則として申請の日から1年6ヶ月経過後に公開特許公報により公開されますが(特許法第64条)、ある物品を表す語が登録商標であると記載されずに公開されてしまうと、その登録商標が取引業界でその物品の一般的な名称であると認識されてしまうことにつながりかねません。特に著名な登録商標は普通名称化の可能性が高まります。
登録商標が普通名称化してしまうとなにがまずいのかというと、識別力を失ってしまい、商標権の効力が制限され、第三者の使用が認められてしまうことがあったりするなど(商標法第26条第1項第2号)、商標権者に不利益を与えてしまいます。また、普通名称化してしまった登録商標の取消制度も検討されています。

ある語が登録商標であるにもかかわらずその旨を特許申請書類に記載しなかった場合には、公開特許公報のフロントページに「特許庁注」でその語が登録商標である旨が掲載されます。

公開特許公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある(公序良俗違反)と認めらるときには、その箇所が不掲載となる場合があります(特許法第64条第2項ただし書)。この場合には適用条文と不掲載の箇所が公開特許公報のフロントページに掲載されることになります。
登録商標であるにもかかわらずその旨を特許申請書類に記載しなかった場合も公序良俗違反に該当することになりますが、特許庁はそのことのみを理由として不掲載とする運用はしておらず、上述した運用をしています。

なお、実用新案法では、実用新案権の設定登録を受けるための基礎的要件の一つとして、公序良俗に違反しないことが定められています(実用新案法第6条の2第2号)。
実用新案登録出願の書類に、ある語が他人の登録商標であるにもかかわらず登録商標である旨を記載しなかった場合には公序良俗違反となります。
しかし、公序良俗違反の理由がこれのみであるときには、特許申請の場合と同様に登録実用新案公報のフロントページに「注」で登録商標である旨が掲載され、基礎的要件を満たさないとして手続補正書が通知されない運用がされる場合があります。

上述したように、特許申請の書類に登録商標である旨を記載しなければいけないのは、登録商標の普通名称化を防ぐためですが、やむを得ない場合に限って登録商標は記載すべきとしている理由は、登録商標の普通名称化防止という以外に重要な理由があると思います。このことについては、申し訳ありませんが別の機会に書かせていただきます。

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